一般社団法人 日本エステティック評議会

エステとクーリングオフ

クーリングオフは消費者を守る制度です。

今では社会への認知も進み、耳慣れた制度になりました。

私たち美容サロンにとっても、『クーリングオフはお客様が行使できる権利である』、という意味で重要な制度です。

もし、お試しコースのお客様から、解約したいというお問い合わせが来たら、あなたはどうしますか?
お客様の契約状態によって、解約できる場合も、できない場合もあります。

例え依頼内容が解約のお申し出だったとしても、サロン側の対応次第で、お客様の印象は全く変わります。

お客様が安心する対応ができるかどうかは、施術やカウンセリングの技術力はもちろんですが、しっかりとした法律の知識が無ければ難しいでしょう。

今回は、お客様と不要なトラブルに発展することの無いよう、今一度クーリングオフとは何かをしっかりと学んでいきたいと思います。

クーリングオフは特商法の規制のひとつ

そもそも、クーリングオフとは、特定商取引法という法律の中で定められている規制のひとつです。

エステサロンのように1度の契約が高額、若しくは長期にわたることが多い業種は、常にトラブルに発展しやすいという側面がありました。

事業者と消費者の情報格差や突然の勧誘のため、消費者が冷静な判断ができず契約してしまい、後になって契約解除を申し出る、といったケースや、事業者が消費者に冷静な判断の時間を与えず、敢えて強硬に契約をさせる、といった事例が相次いで多発したためです。

そういったトラブルは、経済的弱者である消費者側に不利な場合が多く、救済措置の必要性が求められました。

強引な勧誘等の脅威から消費者を守り一定時間消費者が冷静に考える時間を認める、という観点から、

1度結んだ契約でも、消費者が無条件に契約を解除することができる、と法律で定めたのが、
『クーリングオフ制度です。

この制度は法律で定められているため、事業者がこの制度を軽視したり適当な対応をすると、義務違反となり、処罰の対象となってしまいます。

クーリングオフにも条件がある?!

では、お客様から『契約を解除してほしい』と申し出があった時、事業者が無条件で受け入れなければいけないか、というとそうではありません。

クーリングオフ制度が適用となるのには、一定の条件が必要となります。

クーリングオフが適用となる条件

条件1

事業者と消費者が結んだ『契約』が、”金額が5万円を超え、かつ期間が1ヶ月を超えるもの “である

1回きりのお試しコースといった低額、短期のコースは、クーリングオフの対象外です。

金額が50,001円以上か、コースの期間が1カ月と1日以上かかるか、どちらかでも満たしていなければ、
クーリングオフは適用されません。

この条件を満たす高額且つ長期の取引を、法律では『特定継続的役務提供取引』といいます。

条件2

消費者が契約を申し込んでから8日以内に、クーリングオフの意思表示を事業者に書面、もしくはメール等の電子記録で申し出る
クーリングオフは、契約書面を受け取った日、又は申し込んだ日から起算して8日以内でしか適用されません。

つまり契約書面にお客様が名前を書いた日から、8日以内しか有効ではないということです。

現段階では、契約解除の申出は、書面でなくてはいけません。

しかし、2021年6月に特商法の改正案が公布されました。

今後は、メールやUSBの送信といった電磁的記録での通知も可能になります。
2021年、6月1日から施行となりますので、事前の準備を怠らないようにしておきましょう。

口頭で申し出があった場合は、今後のトラブルの可能性についてご説明し、書面もしくはメールでの通知をご案内するようにしましょう。 通常は、はがきでの配達記録郵便を利用するか、より確実に証明を残したい場合は、内容証明郵便の配達記録付きで郵送されます。ただし、郵送の場合、消印が8日以内でないと有効の証明とはなりません。


いつから数えればいいの?

クーリング・オフの起算日は、契約書を交付し、お客様にお渡しした日となります。
なので、契約書に契約日が書いていない、あるいは、契約書を渡していない場合は、いつでもクーリングオフができる状態となってしまいますので、お客様の記入漏れがないかしっかりと確認するようにしましょう。

そして、クーリングオフを通知した日はいつになるのか、というと、
法律では、お客様が、クーリングオフの意志を『発信した日』が、通知日と定められています。

決して、サロンに通知が届いた日ではありません。

消印や電子記録の送信日が『発信日』となりますので、
サロンに通知が届いたのが8日以降だった!と、早まらず、いつ通知を発信したかの確認をするようにしましょう。

クーリングオフが適用になった!
どうすればいいの?

クーリングオフが締結した場合、事業者は『速やか』にお客様に契約金額を全額返金しなければならない、と省令6条において定められています。
ここでいう「速やかに」という概念は、通常概ね1~3日程を指し、遅くともクーリングオフ通知を受けた日より
3日以内には返金する必要があるといえます。
また、お客様にサービスを受ける為に購入して頂いた商品のことを『関連商品』といいます。
この関連商品も、事業者の方に返金と引き取りの義務が発生します
関連商品が既に使用済み、又は開封済みであっても、返金・回収しなければいけませんので注意しましょう。

また、消費者がクレジット会社やローン会社の方でも契約している場合、消費者はクレジット会社へも同様にクーリングオフの手続きが必要になります。事業者は、キャンセル処理の方法や、契約書の処理方法など、クレジット会社やローン会社に事前に確認するようにしましょう。

返金対象になる関連商品って?

では、お客様にサービスを受ける為に購入してもらった商品関連商品とは具体的には何でしょうか。

関連商品に当たるものとして、健康食品化粧品石鹸(医薬品を除く)、浴用剤下着類美顔機脱毛機などが挙げられます。そして、関連商品だということを消費者に提示する為に、
事業者が発行する概要書面に関連商品を記載することが義務付けられています。

記載が無い場合は、関連商品とはなりませんので、記載漏れがないよう注意が必要です。

クーリングオフが締結した場合、関連商品は返金・回収しなくてはいけませんが、例外があります。

関連商品の中の『消耗品』は、対象外となる場合があるのです。

それは、事前に契約書に『商品を使用・消費した場合は解除不可』という文言の記載があった場合です。

この記載があった場合は商品が未開封、未使用でなければ返金対象になりませんので、もし使用していたら返金・回収は不要です。

また、事業者が使用・購入を勧めた商品を“推奨商品”といいます
推奨商品に関しては、クーリングオフによる返金・返品の対象には当たりません。

事業者は、販売する商品が関連商品なのか、推奨商品なのか、そして、消耗品に関しては解約時どういう扱いになるのかをしっかり明記することが大切です。

しっかりとした知識でトラブルを事前に防ごう

事業者は、エステ業が取り扱う契約内容が、トラブルになりやすいという特色、そして、法律の消費者保護の観点についてしっかりと認識しておくことが重要です。

美容サロンを経営していく中で、クーリングオフ制度は避けて通れません。

お客様を美しく、という思いから提案したコースが、お客様への説明や、理解が足りなかったことが原因で、
契約解除となってしまうというケースは少なくありません。

いざ、そういったお問い合わせが来た時に、しっかりした知識がないまま対応してしまうと、サロンの評判や口コミにも多大な影響がある上、サロン側の損失にもつながります。

例えば日付の記載が無い契約書は、起算日が不明なため、実際は8日以上経過していたとしても、
契約上クーリングオフの対象になり得てしまいます。

契約書の記入漏れ、確認漏れがないかをしっかりとチェックすること、関連商品とは何かをしっかりと説明することが大切ですが、
何より大事なのは、契約内容をお客様が十分に理解した上で契約を結ぶことです。

日々の契約処理は気を抜かず、ひとつひとつ丁寧な対応を心掛けていきましょう。

JACでは、安心、安全なサロン経営のサポート事業の一環として、定期的なセミナーを開催しております。
セミナーでは、法律の専門家が丁寧に分かり易くエステと法律について解説致します。
サロン運営に関わる法律を学ぶ場として、ぜひJACのセミナーをご利用下さい。

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