一般社団法人 日本エステティック評議会

エステと広告規制 その2

間接規制(施術による効果)

今回は“間接規制”についてみていきましょう。

間接規制とは、禁止事項が直接定められたわけではなく、その他の法律によって、制限が必然的に求められるという規制パターンでした。


“間接規制“において、ガイドラインとなっているのが、薬機法医師法です。

これらの法律は、医師や薬剤師などに向けた法律です。

一見私たちに関係ないようにも思えますが、医者でないとやってはいけない行為を定める法律ですので、『医師ではない』私たちは、『医師』のような行為をしてはいけない、という間接的側面でこの法律に関わってきています。


ガイドライン

薬機法及び医師法では、
『人体に危害を及ぼす恐れのある行為を禁止』しています。

この規制のポイントとなるのは、
『身体の構造・機能に影響を与えるかどうか』です。

簡単に言い換えると、
『エステティック業では、人体に医学的な影響を与えてはいけない』ということです。
先にも述べた通り、“薬機法”や“医師法”では“エステティック業”についての直接の記述はありません。
ではどのように”エステティック業”が規制されているのか見ていきましょう。


最初に見るのは“薬機法”です。

薬機法

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、
『医師ではない者の医薬品の取り扱いを禁止』しています。

また、医薬品や医療機器だけでなく、医薬部外品、化粧品の定義を定め、健康食品の規制にも活用されています。これらの定義を定めることで、それぞれに使用可能な効果効能の範囲を明確に差別化しています。

“医薬品” とは、病気の「治療」を目的とした薬のことで、厚生労働省より配合されている有効成分の効果が認められたものです。医薬品は2種類あり、医師によって処方されるのが処方箋医薬品、薬局で買えるのが一般用医薬品です。

また、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合され、人体に対する作用が緩和で、販売許可を必要とせず、治療に用いられないものは“医薬部外品”となります。不快感の『防止』や『衛生』を目的として作られたもので、スプレー型殺虫剤や予防効果のある歯周病予防歯磨き粉などがこれにあたります。効果のある有効成分が配合されているので、広告でその効果を訴求することができます。

医薬部外品と比較しても、さらに効能・効果が緩和で、身体を清潔にしたり、美化し、皮膚や毛髪を健やかに保つために体に塗擦したり、散布するものは“化粧品”です。

その他、診断や予防、治療の為、身体の構造や機能に影響を及ぼす機械器具“医療機器”というように区別されています。

ここまでが、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の違いです。

化粧品

有効性と安全性

人体への影響がどの程度あるのか、という有効性と、万人が安心して使うことができるか、という安全性が、これらを分けるラインとなっています。

効果が強い薬は、使い方次第では、毒にもなり得ます。そのため、使用できるのは、資格を持った一部の者にしか認められません。医薬品は人体への有効性が高く、安全性は低いと言えます。

化粧品は、資格や知識がなくとも誰でも使えるものです。万人が安心して使えるということは、使ってもなんら人体に影響を与えないことを意味します。化粧品は、人体への有効性が低く、安全性が高いものだと言えます。

     人に対する有効性の高さ 『医薬品』>『医薬部外品』>『化粧品』
     人に対する安全性の高さ 『化粧品』>『医薬部外品』>『医薬品』

使える表現

薬機法では製品に関して表記する場合、使える言葉にそれぞれ制限を設けています。

消費者に、『医師でない者が、医師のような行為や治療のような効果をもたらすことができる』という誤認を防ぐ為です。誤認とは、実際『ない』のに、『ある』と思わせることでしたね。

エステティック業が取り扱えるのは、『化粧品』『医薬部外品』です。

使用できない言葉を使った場合、薬機法違反で処罰の対象になる場合があります。

化粧品を取り扱う上で、医薬品だと取られない為にはどういう表現が使えるのか、しっかり確認していきましょう。

“医薬品”と分類され、厚生労働省から表記する効果が認められている場合に限り、改善”治療”という表記ができます。

“医薬部外品”は医薬品ではありませんので上記のような表記は使えません。
しかし、医薬部外品は、認められた効果に関してのみ、広告に表示できます。認められていない効果効能は、化粧品と同じ扱いになる為表記できません。
使用が認められているのは、“◎あせもを防ぐ”◎にきびを防ぐ
◎日焼けによるシミ・ソバカスを防ぐ”
などといった、”◎○○を防ぐ”◎防止”、といった表現や”◎肌荒れ””◎荒れ性””◎皮膚の殺菌”などがあります。

“化粧品”“✖美白”アンチエイジング”と言った、医薬品であるかのような表記はできません。“◎エイジングケア◎シミを見えにくくする”という表現になります。

医療行為と誤認

“薬機法”では、広告に関して規制が2つあります。

その1つが誇大広告の禁止です。
“薬機法”では、『製品の製造方法や効果、性能についての、嘘や誇大な表現』と、『医師が保証したものと誤解されそうな表現』禁止しています。

また、“製品に、堕胎やわいせつを感じさせるようなものを用いてはならない。”とも規制しています。

おおげさな表現や、他社商品を誹謗中傷するような表現は、この誇大広告の禁止事項にあたります。医師の他に、理容師、美容師、病院、診療所、薬局等権威性のあるものからの推薦表現も禁止されています。“✖医師監修”美容師も認めた”といった表現は使えません。例え推薦していることが事実であっても、記載はできません。

体験談や口コミであっても、扱いは同じです。『✖たった1カ月で効果を実感しました』といった効果効能を言及した口コミも規制対象になります。 “◎使いやすい”“◎べたつかない”等の使用感などを述べている場合は違反にはなりません。効果を断言するような表現は“誇大広告”とみなされますので注意しましょう。

承認前医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

2つ目の広告規制は “承認前医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止”です。
名前が長いので、難しく感じてしまうかもしれませんが、“行政の承認や監督のもとでなければ、医薬品や化粧品の製造や輸入、調剤で営業してはならない”ということを定めた法律です。サロン側の視点で言い換えると“健康食品、化粧品、美容機器等に薬効があると宣伝してはいけない”ということです。
ではどのような表現が“薬効”にあたるのか見ていきましょう。

健康食品や化粧品の効果、効能として、“✖1週間で痩せる”“✖10分で納得の効果”15分でセルライト解消”のように、薬のように万人に効果がある、又は短期間で効果が出るという表現違反です。

化粧品はあくまで健康を保つためのものであって、何度も臨床実験をして効果や効能を明確にした薬とは違います。その為、化粧品の数値表示は、科学的に実証されておらず根拠がないものとみなされます。

美容機器の効果、効能に小顔”リフトアップくすみがとれる等、医療機器の効果を認めるような表現も違反です。

アンチエイジング”エイジングケア”などに言葉を変えて表示するようにしましょう。

他にも、『✖安全性は保障されています』『✖これさえあれば』『✖安全性は確認済み』『✖赤ちゃんにも安心』といった、確実に安全であるような表現も禁止です。『◎安全性に努めています』といった表現に変換しましょう。

医師法

次に“医師法”です。これは “医師でなければ「医業」をしてはならない。“医師免許を保持していないものが、医療行為だと誤認されるような記載をしてはならない”と定義付けている法律です。

医療行為をしていなくても、そう誤認されるだけで違法にあたります。

“✖治す”効く矯正”解消”改善”は医療行為を連想させるので、禁止用語です。

『◎保つ』防ぐ』与える』整える』などに変換し、断定する表現を避けましょう。肌に関して使用できるのは、他にひきしめる』補う』保護する』柔らげる』ハリ』ツヤ』滑らか』『△目立たなくする』が挙げられます。

しかし、『乾燥による小じわを目立たなくする』という表現は、10年ほど前に認可が下りた比較的新しいもので、「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験、またはそれと同等以上の適切な試験を行い、効果を確認された製品でのみ表現することができるとされていますので、使用する際は注意が必要です。

間接規制のポイント

薬機法や医師法で定められている禁止事項は、規制の範囲が広いため、使っていい表現とダメな表現の線引きが非常に曖昧になりやすく、難しい部分です。

広告を作る時は、以下の点を参考に、不適格な表現になっていないか判断するようにしましょう。

ポイントは、①明確な根拠を示す②断定した表現は避ける。④医療を連想させない。です。
また、表現方法を変えることで、使用できる言葉に変換する、といったやり方もおすすめです。

たとえば、“◎ツルツル”サラサラ”といったオノマトペを使った表現や、
サポート”ケア”といったぼかした表現ならば使用可能です。

広告違反は必ず防げる

このように、直接的、間接的に広告表記には規制があるということがお分かりいただけたかと思います。

企業にとって広告とは、集客のツールとして欠かせないものです。HPや、カタログ、SNSなど、その種類は幅広いですが、その全てに、直接的・間接的な規制がかかっています。膨大な広告の中のたったひとつでも、表記に問題があった場合、企業の評価が下がるだけでなく、重大な違反とされた場合は課徴金の支払いという直結的なダメージも伴います。

しかし、広告規制は、突発的な事故とは違い、事前のチェックで必ず防ぐことができるものです。

不適切な表現がないか、記載の漏れがないかを厳しく都度確認し、自信を持って広告活動をしていきましょう。

今回取り上げた用語を表にまとめましたので、ご参考下さい.。

使えない言葉言い換え・禁止理由
最高の、最新の、究極の、世界初、世界1 サロン支持率No1◎1位、No1などは、実際にいつ、どこで、どのようなもので1位になったか、調査機関名と調査期間を明記して明確な根拠を記載すればOK。✖ただし、自社調べのランキングは、客観的な指標にはならない
効果抜群、完璧、完全、確実に、
絶対、必ず
✖将来の予測ができないものを断定してはいけない。
証明が難しいため使用は避ける。
1回で効果が出る、30分できれいな素肌に 衝撃の20分◎施術内容、時間、具体的な効果を記載すればOK
今なら、今だけ◎いつからいつまで、と具体的な期間を記載すればOK
特別価格、セールス価格、激安、超特価、投げ売り、破格◎通常価格(過去に実際に販売があった実績が必須)の記載すればOK
500円でたっぷり90分◎施術内容、時間、具体的な効果を記載すればOK。 他に別途請求が発生する場合は、その詳細も明記する。価格は税込価格を記載すること。
友人としてサロンをお勧めする✖勧誘前に事業者名、勧誘目的であることを消費者に
告げなければいけない
購入しない客に対し、
長時間勧誘して引き留める
✖消費者への圧迫・困惑行為は禁止
客が選ぶコースだと割高になると知りつつ それを告げずに
契約を締結する
✖重要事項の不告知は禁止
予防、治療、改善、治る、小顔、
リフトアップ、療法、
くすみが取れる、副作用が無い
解消、矯正、効く、正常化
◎サポート、ケア、保つ、防ぐ、与える、整える、ひきしめる、補う、
保護する、柔らげる、ハリ、ツヤ、滑らか
※予防、抑える、防ぐ◎効果が認められている医薬部外品であれば使用可
美白◎メイクアップ効果で肌が白くなる
シミが消える◎シミを見えにくくする
※「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験により効果が認められた場合に限る
1万人が絶賛✖誇大広告
医師推薦、美容師も認めた✖医師などの権威性がある者からの推薦禁止
○○サロンには気を付けて!✖他社の誹謗中傷禁止
口コミ:絶対毛が生えなくなります✖口コミ、体験でも、効果の断定は禁止
本来の力を引き出す✖✖効果の暗示も禁止
(化粧品・健康食品を使うと)10分で驚きの結果、15分で解消、10分で納得の効果、1週間で痩せる✖医薬品又は医薬部外品のような、短時間で効果が出るという表記は禁止
アンチエイジング◎◎エイジングケア
安全性は保障されています◎安全性の確保に努めています
体験談:1カ月で効果を実感◎体験談:使いやすい、べたつかない(使用感ならOK)
代謝を改善して美肌へ◎ツルツルの肌、サラサラの肌(オノマトペの表現)

JACでは、健全なサロンの経営サポートの一環として、定期的なセミナーを開催しています。
セミナーでは、エステサロンで取り扱う法律に焦点を絞り、オーナー様に向け分かり易く解説しています。
法律を学ぶ場として、ぜひご参加ください。

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