『広告』は、私たちの業務において非常に重要な集客ツールのひとつです。
街の電光掲示板や、看板をはじめ、ティッシュ配りも広告です。
電車の中吊り広告や、家に届くDM、携帯や雑誌など、私たちの周りには、様々な広告が溢れています。
広告の役割は、新しいお客様の流入を生み出すことであり、サロン運営において切り離すことはできません。
しかし、実際に広告を発信する側には多くの規制があり、いくつもの企業がその誤った広告によって行政処分を受けています。
広告にまつわる規制は、身近であるが故に、見落としてしまう落とし穴が非常にたくさんあるのです。
今回は、健全なサロン運営の為に、広告規制について学んでいきましょう。
広告と聞くと、皆様は何を思い浮かべるでしょうか。
ポスターやチラシ、パンフレット、雑誌、CM、まだまだたくさんありますよね。
広告については、特定商取引法や景品表示法でその定義を示しています。
そこでは、広告とは、事業者が顧客を勧誘する際に利用するものすべてである、としています。
その定義に照らし合わせると、商品の包装から、DM、HPや看板、電話による勧誘や実演販売まで、視覚的、聴覚的、触覚的に消費者に訴え得る全てが広告だと言えます。
広告とは、ありとあらゆるものを包括する、極めて広範囲なものなのです。
それに加え、“広告”は消費者や市場に与える影響力が非常に強いものだとして、様々な法律によって、厳しい規制が加えられています。
“広告”に関する規制は、主に2種類に分けることができます。
法令で直接定められている“直接規制”と、直接定められてはいないけれど必然的に求められる“間接規制”の2つです。
これを簡単に例えてみます。
箱の中に赤いボールと青いボールが合わせて50個あります。
法律で、赤いボールは10個でなければいけない、と定めました。
この赤いボールに対しての規制が”直接規制”です。 青いボールについては何も規制がありませんが、合わせて50個と言っているので、必然的に青いボールは40個でなければいけなくなります。これが”間接規制”です。
今回は、広告表記を直接的に規制している法律に絞って見ていきます。
不当表示って何?
不当表示とは、嘘や大げさな表現によって消費者をだますような表示のこと言います。
このように、景品表示法では、“不当表示”自体を“直接的”に禁止しています。
“直接規制”によって重要視しなければいけないポイントは
“広告によって消費者を騙しているかどうか”です。
消費者が、商品や役務の内容が優れている(優良性)、又は取引条件が得である(有利性)と誤認するような表現がこれにあたります。
誤認とは
誤認とは、実際のものと、消費者が広告表示から受ける印象・認識との間に、差が生じることを言います。
例えば、実際には取り扱っていないコースを表示したり、いつもと同じ価格なのに「本日限りこの価格」と表示したり、実在する取引条件が『ない』にも関わらず、『ある』と消費者が誤って認識することです。
誤認と言っても、誤認が生じる可能性が高いと認められれば十分である為、表示を行う事業者の主観的意図はもちろんですが、その故意や過失も問題とされません。
例えば、広告代理店や印刷業者のミスで不当表示にあたる内容の表示物が消費者に表示された場合でも、広告主である事業者が不当表示の主体として処罰対象になってしまうため、広告表記には特に注意が必要です。
優良誤認表示とは、商品やサービスの質が“著しく良い”と誤解させる表現です。
不実証広告規制
優良誤認表示をすると、不実証広告規制違反とみなされます。不実証広告規制では、広告で宣伝された商品の効果や性能について、消費者庁が事業者に根拠資料の提出を求めた場合、15日以内に根拠を示さなければならないと定めています。
明確な根拠がないまま、優位性を示す表現をしたと判断された場合は、罰則や罰金が科される場合があります。
優良誤認表示となる表現
最上級的な表現 “✖最高の”、“✖最新の”、“✖世界初の”、“✖№1”などが優良誤認表示にあたります。こういった表現を使う場合は、明確な根拠が無くては使ってはいけません。裏付ける根拠があった場合でも、その事実を合わせて表示しなければ使うことができません。
また、断定的表現、“✖効果抜群”、“✖完璧”、“✖完全”といった表現は、証明が難しく優良誤認表示とされやすいので使うのは避けましょう。
また、エステや脱毛でよく使われる“△使用前と使用後の比較写真”ですが、これも注意が必要です。ビフォーアフターの写真によって、『◎化粧くずれを防ぐ』、『◎小じわを目立たなく見せる』、『◎みずみずしい肌に見せる』、『傷んだ髪をコートする』などの化粧品のよる物理的効果や、『◎清涼感を与える』、『◎爽快にする』などの使用感を表現する場合であれば、使うことができますが、“どのような方法で、どのくらいの期間、どのくらいの頻度で“施術をしたのか”など、詳しく明記する必要があります。ただし、たとえ効能効果の範囲内であっても、✖予防についての効果を示す場合は、ビフォーアフターの写真ではその証明にはなり得ないということから、利用が禁止されています。
有利誤認表示とは、商品やサービスが“著しくお得だ”と誤解させる表記です。
景品表示法
有利誤認表示をすると、景品表示法に違反したとみなされ、処罰の対象となります。
公正取引委員会は、景品表示法違反となる不当な価格表示のガイドラインを以下の様に定めています。
1,実際の価格より安い価格を販売価格として表示すること
2,通常他の関連する商品や役務と併せて一体的に販売されている商品について、これらの関連する商品または役務の対価を別途請求する場合に、その旨を表示しないで、商品の販売価格のみを表示すること
3,表示された販売価格が適用される顧客が限定されるにも関わらず、その条件を明示しないで商品の販売価格のみを表示すること
4,二重価格表示(架空のメーカー希望小売価格や根拠のない市価等)
有利誤認表示となる表現
具体的根拠や説明がないのに、消費者にお得だ、と感じさせるような取引条件を示す表現、“✖衝撃の20分”、“✖1分で結果が出る!”、“✖今ならたった月額5千円”などは、有利誤認表示にあたります。
“◎今だけ”といった期間を表示する場合は、いつからいつまで、と具体的な期間を決めなければいけません。
“◎セールス価格”をうたうのであれば、通常販売での実績がなければならず、その明記も必要です。
同じく、『◎2点以上購入の場合10%OFF』など、適用される条件が限定されている場合も、その条件を明記しなければなりません。
“いつ、どこで、誰が、何を、どのくらい”なのかをしっかりと記載することが重要です。
優良、有利誤認表示以外の不当表示として、内閣総理大臣により具体的に指定・規制されている表示のことで、現在6告示が指定を受けています。
1.無果汁の試料飲料水等についての表示
(果汁5%未満の場合は、「無果汁」を示す表記または実際の含有量を表示しなければならない)
2.商品の原産国に関する不当な表示
(原産国以外の国名、地名、地域、地図を表示してはいけない)
3.消費者信用の融資に関する不当な表示
4.不動産のお取り広告に関する表示
5.おとり広告に関する表示
(商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示をしてはいけない) 6.有料老人ホームに関する不当な表示
サロンオリジナルで化粧品やサプリを販売する場合は、1.の無果汁に関しての表示や、2.の原産国に関する表示について、注意が必要です。
尚、おとり広告とは、客寄せのためだけの条件のいい商品や役務等の広告を指します。
実際には販売しない安いコースを広告に表記して、消費者に高額なコースで契約させるといった行為は違法です。『△限定10名様』、『△1人につき1点まで』といった、販売に限定条件があるのにも関わらず記載していない場合も、おとり広告とされる可能性があります。
“直接規制”の最後は特商法の広告規制です。
特商法は前回やりましたね。特商法は、事業者側への規制だけでなく、消費者保護のための救済措置を含む法律でした。
特商法でも、直接的に広告を規制しています。広告の定義でも触れましたが、『勧誘行為』も、広告と同じ扱いとなります。
特商法における、広告に関する規制は3つあります。
広告規制:“事業者が広告をする際には、重要事項を表示することを義務付け、また、虚偽・誇大な広告を禁止”しています。
ここでいう“誇大広告”とは、“著しく事実に相違する表示”や、“実際のものより著しく優良であり、有利であると、人を誤認させるような表示”をいいます。
景表法の✖優良誤認、✖有利誤認を、文言は多少違いますが、特商法でも直接的に禁止しています。
氏名等の明示の義務:勧誘前に、事業者名や勧誘目的であることを消費者に告げる義務です。
実際は、エステの勧誘が目的であるのにも関わらず、知人としてサロンを勧めたり、サロン名を告げずにサービスを受けさせてしまうと、違法行為にあたります。
不当な勧誘行為の禁止:価格や支払いに関して、嘘の説明をしたり、威迫して困惑させるような勧誘行為を禁止しています。
たとえば、支払金額を一部しか告げずに契約を結んだり、長時間にわたり契約をせまったりする行為が、この不当行為にあたります。 事業者側は、単純にコース提案しているつもりでも、消費者自身が強引に勧誘されていると感じただけで、事業者側の不当な勧誘行為とみなされますので、気をつけましょう。
以上が、広告表記に関する”直接規制“にあたる法律です。
商品やサービスの表示方法には、いくつもの規制がかかってくるということがお分かりいただけたかと思います。
特に、優良誤認、有利誤認は、景表法や特商法、どちらからも規制されています。
それは、多方面で規制をかけなくてはいけないほど、過去に違法行為と認められる事例が多くあった、という表れでもあります。
それを踏まえ、事業者は広告表記に関して慎重に取り組まなければいけません。
次は間接規制です。