『引っ越すことになった』
『支払を続けていくのが難しくなった』
そういった理由で、せっかく契約がとれたコースを途中でキャンセルされるケースは、サロン側としては非常に残念です。
しかし、こういった美容サロンにおける中途解約については、事業者の解約拒否や、高額な違約金の請求など、長く事業者と消費者との間で問題視されていました。
その消費者の救済措置の為に特定商取引法が改正され、事業者に対し義務や制限が設けられ、消費者には権利が与えられ、現在のようなルールに至っています。
事業者がルールを無視する行為は、今では処罰の対象になっています。
知らずに違法な対応をしてしまうことのないように、中途解約について学んでいきましょう。
前回のコラムではクーリングオフについて学びました。
クーリングオフとは、
金額が5万円を超え、かつ期間が1ヶ月を超える契約(特定継続的役務提供)を、
書面で申し込んだ日から数えて8日以内であれば、消費者が契約を解除できる
という制度でした。
中途解約とは、
金額が5万円を超え、かつ期間が1ヶ月を超える契約(特定継続的役務提供)を、
消費者が契約を申し込んで9日以上経過した段階で解除すること
を言います。
クーリングオフと中途解約、どちらも金額と期間が「特定継続的役務提供」にあたるという点は同じです。
お試しや1回コースのような低額で短期間のコース契約では、クーリングオフも中途解約も認められません。
クーリングオフと中途解約の違うところは、申し込んだ日からの経過日数です。
8日以内の解約であればクーリングオフ制度が適用されます。
8日を過ぎてからの解約は中途解約の規制が適用されます。
条件的には似ていますが、解約の申し込みが8日以内かどうかだけで、事業者側の取るべき対応は全く異なります。
クーリングオフの場合、原則契約金額の全額を速やかに返金しなければいけませんでした。
では、中途解約になった場合、事業者側がしなくてはいけないことは何でしょうか。
特商法では、申込から8日を過ぎた契約の解除を、 “中途解約”とし、
役務提供期間内であれば、理由を問わず、
所定の費用を支払うことでいつでも中途解約ができる と規定しています。
中途解約はクーリングオフと違いお客様からの書面は必要ありません。
エステを受ける為に購入してもらった商品(関連商品)は、事業者負担で返金・回収をします。
ただし、購入を推奨する推奨商品は返金・回収の対象外となります。
また、関連商品が消耗品の場合、契約書に関連商品の扱いについて「使用・消費した場合は解除不可」と記載があれば、商品が使用済であった場合に返金・回収の対象外となります。
さらに、特商法では、事業者が消費者に対し、既にサービスを提供した分の料金と、違約金(中途解約にかかるキャンセル料)を請求することを認めると同時に、違約金の請求金額に上限を規定することで、事業者が無理に高額な違約金を請求できないよう、消費者トラブルの防止を図っています。
もしサロンが、請求金額以上の額をすでに受け取っている場合には、消費者に対しその差額分の返金義務が発生します。
中途解約は、役務提供期間を過ぎている場合は原則認められません。
もし、お客様から解約の申し出があったとしても、期間が過ぎていれば解約はできないということになります。
この役務提供期間とは何でしょうか。
役務提供期間とは、契約書に記載されているエステの有効期限のことで、簡単に言えば、サロン側が決めた”〇年以内に契約回数分の施術を受けてください”という決まりのことです。
役務提供期間は契約書に記載が義務付けられていますので、事業者は必ずこの期間を提示しなくてはいけません。解約となった時に、期間内かどうかを示す大切な部分でもあるので、記入漏れや誤字がないよう注意が必要です。
中途解約では違約金が発生します。違約金には上限があり、さらにサービスの利用開始前か後かによって金額が変動します。業種により異なりますが、エステサロンで定められている違約金の上限は
施術前なら2万円、施術後なら2万円か、未使用サービス料金の10%のどちらか低い方です。
施術後の違約金の上限を詳しく見てみましょう。
例えば、15万円のコースを契約した場合、15万円の10%は1万5千円です。この金額は2万円よりも低いですから、この場合の違約金は1万5千円となります。
ここで、事業者側が請求する金額と、返金する金額を表すと以下のようになります。
“支払われている金額(契約金)―施術済み料金―違約金=返金額”
間違った金額の請求や返金はトラブルの原因となりますので、間違えが無いよう慎重に確認しましょう。
特商法によって、契約解除に関して様々な規制ができ、事業者側にかかる負担も大きいものとなりました。
しかし、面倒だといって軽く見てしまうと、処分の対象になってしまう危険性があります。
事実、解約時のトラブルが原因で行政処分を受ける企業も多くあります。
処分の対象となってしまうと、HPでサロン名などが公開されてしまうため、サロンのイメージや評価にかなりのダメージを与えてしまいます。
しかし、地道に適正な返金対応などの姿勢を続けることで、企業の信用度や評価も上がり、結果優良サロンとして運営していくことができます。
法律を学ぶことで、優良サロンへの基盤をしっかりと築いていきましょう。
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