サロンを運営するにあたって、必ず直面するのがお客様からのクレーム。今日はクレームから、民法や刑法にある法律を使ってお店やスタッフを守る方法を解説します。
まずはどんなことがクレームの原因になるのかを見てみましょう。
明らかに怪我を負わせてしまうような稚拙な施術や、サロン販売品の欠陥・不足、予約が入っていない、過剰請求などが当てはまります。また、「折り返しお電話します」と約束して電話をしない約束不履行も、サービスの品質不良に当てはまります。
「不愛想」「言葉遣いが失礼」「挨拶がぞんざい」などが当てはまります。こういったお客様ご自身の自尊心を傷つけるような行為や言動はお客様の怒りを倍増させる大きな要因となります。
「配送は3日待ってもらえないと商品が配送できない」「LINEの友達登録をしないとサービスが受けられない」「レシートがないと返品できない」といったように、ダメ・無理・決まりごと・システムといった自社の都合やルールを一方的に押し付けるのは怒りのもとになります。普段の接客の際からあくまでもお願い、依頼形表現で伝えることを心がけるとこのクレームはなくなります。
こちらに非がなくても、クレームは発生します。説明を理解しない、施術後のイメージと違った、さらに「そんなこと聞いていない」というお客様の勘違いなどです。これらはお客様が悪いのではなく、事前の
説明不足や配慮のなさから誤解させたサロン側にも落ち度があると考えるべきです。
対応の遅さや、返事の遅れ、説明不足によるクレームは、火に油を注ぐようにお客様の怒りを倍増させます。もちろん、それらはサロン側の問題意識の低さの表れでもあります。クレームには言葉を選んで慎重に対応しなければいけません。
では、突然のクレームにどのように対応すべきかを見ていきましょう。
クレーム対応で一番最初の目標は「事実確認」です。サロンが起こした何らかの問題について、話を丁寧に聞きましょう。この時、メモを必ずとりましょう。
お客様の主張はそのまま受け取らず、起きた事実のみを確認します。もちろん、こちらに非がある場合は誠心誠意、謝罪をしましょう。場合によっては医療費などを支払うことが必要になってきます。しかし、被害の状態以上に要求がある場合はコチラも毅然な態度で対応をしなくてはいけません。
カスタマーハラスメント(通称:カスハラ)が話題になっていますが、クレームも悪質化すれば犯罪です。そうなった場合、警察や裁判所などを介した「紛争処理」として解決するのが安全です。カスハラに関連することの多い罪名の知識があると、なにかあった際でも混乱せずに対応できる「後ろ盾」になります。この機会に代表的な違法行為を見てみましょう。
相手を脅し、大声を出し、物を壊して恐怖を与える行為は2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
<具体的な発言例>
「こっちは客だぞ!この店はなめてんのか!(机を叩く、壁を蹴る)」
「担当者の名前は把握したからな。組の者には、もう話をつけておいたから」
脅迫などで相手を怖がらせ、金品を脅し取る行為は、10年以下の懲役が下ります。また、恐喝罪に該当しうる行為は、「ネット等に悪評を流す」「上司に言う」などの揺さぶりをかけたうえで、過剰な見返りや金品の要求をすることです。
<具体的な発言例>
「まさか謝罪だけで済むと思ってないよね? 慰謝料、百万は払ってもらうよ」
「今回のことは公にしたくないよね?『それなりの誠意』を見せるのが普通ですよ?」
脅迫や暴力を用いて、相手に義務のないことをさせると3年以下の懲役となります。謝罪の意を示すだけで満足せず、「土下座」や「謝罪文の提出」、「関係者の辞職」など、義務を越えた行為を強いたり、実現できないほどの償いを求めたりするのも該当しうる行為となります。
<具体的な発言例>
「ほら、今すぐここで土下座しろよ!」
「今すぐ、ここで謝罪文を書けよ。できあがったら、他の客にも聞こえるように読め」
④威力業務妨害罪
威力を用いて業務を妨害すると、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金。大声を上げる・机を叩く・蹴るなどの行為で、その場にいる人たちを怖がらせたり、迷惑をかけたりして、要求を無理にでも通そうとする行為は威力業務妨害に相当します。
<具体的な発言例>
「(机を暴力的に叩きながら)オイ、聞いてんのか? どうするんだよ!」
「(その場にいる人たちに大声で)お客さまに向かってこんなことを言うんですよ~!」
このような違法行為には一人で対応・判断せずに、警察や弁護士に頼り、2度と同じことが起きないよう断固として対応しましょう。「カスハラ」はサロンにとって大きなリスクです。速やかに団結し、チームで動くことが出来るように、日ごろから準備をしておきましょう。
「カスハラ」対処フレーズ集
●迷惑行為を繰り返す場合
「これ以上そのようなことをされるなら、警察を呼びます」
「そういった行為は、強要罪にあたると理解しています」
「私どもとしては、断じて応じることはいたしません」
「これ以上のご無理をおっしゃるようなら、弁護士を通じて相談させていただきます」
●金品の要求をほのめかすような場合
「当社の担当弁護士から対応させていただきます」
「オーナーに確認して後日あらためて回答させていただきます」
「お客さまのおっしゃる『誠意』というのは、具体的に何を指しているのでしょうか?」
※相手に金品の要求を具体的に発言させると法的手段での対処がしやすくなる。金額交渉は絶対にこちらから提案しない。
「お客さまのご意見をしっかり理解するため」など相手を納得させる一言を述べ、録音などで記録をとりつつ対応するようにします。記録を取る姿勢を見せることで相手がひるみ、事態がおさまる場合もあります。
「ご意見を間違って認識することがないよう、録音させていただけますか?」
「お客さまのご意見をしっかり理解するために書面にて記録をとらせていただいてよろしいでしょうか?」
もしも記録をさせてくれないお客さまには、「交渉の経緯を正確に記録するためのものなのでご協力ください。それとも、記録に残すことができないことをご要望ですか?」と冷静に質問することも効果的です。
「お怒りではあったが当然のご要望だった」「最初は穏やかだったのに途中から豹変した」、など、カスハラはその場での判断が難しいものです。サロンでクレーム対策会議を開き、ケーススタディとして学習する、情報共有するなど、チームとして情報と経験を共有しましょう。
カスハラはお客様でもあるということで判断が難しい場合もあります。しかし「暴力行為を許さない」という共通認識のもと、犯罪行為に該当する場合には毅然とした態度をとることが必要です。サロンスタッフで特定の1人だけが被害にあい、責任を取らされないように一致団結して対応できるようにチームワークが必要です。暴力に屈しない風土づくりを心掛けていきましょう。
今回はクレーマーに対する対応を中心にご紹介してきましたが、本当にケガをしたり、お客様の持ち物を汚してしまったりと、心からの謝罪と慰謝料などが必要な場合も生じます。我々、日本エステティック評議会では、そのような際にサロンオーナー様が頼れる賠償責任保険を運営しております。サロンワークに役に立つ検定試験なども実施されており、安心感を持ってサロン運営が行えるように活動をしています。